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モノおくり(Sacrificial animal),2012 「モノおくり」について はじめに 以前、考古学の先生が、縄文時代の遺物の写真を見せながらその当時の人々が暮らした環境や世界観について教えてくれたことがありました。人類は長い時代、気候に合わせた暮らしを営み、文化・社会を形成し、祈りを捧げながら生きてきたのではないかということを、我々は過去から遺されたものから窺い知ることができます。そして、現代に生きる我々は未来に何を遺していくことになるのかということを考えさせられます。「モノおくり」は、そのような「自然と人間との交渉のありよう」についての問いがきっかけとなって生まれたものです。 環状集落 環状集落とは、中央に墓を伴う広場を持ち、その周囲に住居が配置された、縄文時代前・中期の社会を端的に表す集落形態です。集落の中心に墓地や広場を配するこの構造は、儀礼や祭祀が縄文の人々にとって重要な意味を持っていた事、さらには、死んだ者への祖先祭祀が社会統合の重要な意味を持ち始めたことを映し出しているという考え方もあります。墓地や祭祀跡があるということは、そこで儀礼や祭祀を行うならわしがあったと考えられます。祭祀や儀礼には、その共同体の伝統的な秘密の知識や意味が込められていました。先祖から伝わる知識や技術を、次の世代に継承していくという意識は、縄文時代から既にあったのかもしれません。 環状列石 環状列石は、葬祭と祭祀儀礼の空間であったと考えられている、縄文時代を代表する大規模なモニュメントです。北海道から東海地方に至る東日本の一円に分布し、その中心域を構成するのが青森、秋田、岩手の三県となっています。内帯と外帯の二重の組石群からの構成で、その間に高さ一メートルほどの立石を中心とした日時計状の配石を伴うなど、明瞭な規格性が見られます。また、配石を結んだ線が冬至の日の出と夏至の日の入りに対応し、周囲の山の位置関係などの自然景観を意識した上で環状列石の占地する場所や構造を設計していることから、そこで季節に関係する儀礼やマツリが執り行われたと考えられています。 オンカロ 話が飛びますが、フィンランドのユーラヨキ自治体に属するオルキルト島に、「オンカロ」と名付れられた、「地下岩盤特性調査施設」が建設されています。これは、原子力発電所から出される使用済み燃料(高レベル放射性廃棄物)を地下に埋めて処分する、世界初の最終処分場です。耐用年数は、放射能レベルが生物に無害になる十万年とされています。 おわりに 十万年をさかのぼると、アフリカに原生人類の祖先がいて、ヨーロッパではネアンデルタール人が暮らしていた時代になります。十万年後=三千世代後の人類はどのような姿をしているのでしょうか。どのような社会のなかで、どのような言語を用い、文化を形成しているのでしょうか。現代の我々が歴史的な建造物や遺跡に興味を抱くように、十万年後の人々も、オンカロを何かの信仰装置や儀礼の場だと考えるかもしれません。 参考文献:
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