ひじおりの灯取材ノート② | Nozomi TANAKA ひじおりの灯取材ノート② – Nozomi TANAKA

 

     
ひじおりの灯取材ノート②

※本投稿は、Facebookページ「ひじおりの灯【灯籠絵制作ノート】」(https://www.facebook.com/hijiorinohiNote/)で書いた記事の転載になります。「ひじおりの灯2020」に参加する作家が、取材や制作過程を投稿していきます。ぜひページをフォローしてご覧ください。
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{取材記録(7月2日-3日)|田中望}

2回目の取材に訪れました。今回は、仙台から初めて参加される大久保さんとともにフィールドワークを行いました。私は肘折に通うようになって8年ほどになりますが、思えばこの場所で自分が案内役になるのは初めてのことでした。いつも案内される側の自分が案内する側になってみて、よその土地の者でありながら、半分内側の者であるような気持ちになりました。

 

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【烏川渡船場跡と阿吽院跡】

肘折に来る途中に、「烏川渡船場跡」と「阿吽院跡」に立ち寄りました。最上川と烏川(現:銅山川)が合流する場所に位置し、村山地方や仙台から肘折に入り月山を詣でる道者たちが利用したそうです。阿吽院に伝わる肘折の開湯縁起の中には、この最上川と烏川の合流点で、烏川上流から流れてきた「唐麻(からそ)」を諸国巡礼の行者が見つけ川上に人家があるのに気づき、地蔵の導きで肘折に到達したと説く伝説があると書かれていました(参:肘折読本 [発行]肘折地区・肘折温泉郷振興株式会社)。諸説あるうちの一つではありますが、この場所は肘折にとって始まりの地のひとつと言えるのかもしれないと思いました。渡船場跡には現役なのか不明な船が係留してあり、その周辺には大きなクルミの木が生えていました。クルミの木に昔の風景を訊ねることができたら良いのになと思いました。その付近を飛んでいたカワトンボの羽がまるでカラスの羽のような色をしていて美しかったです。インターネットで調べてみたらカラストンボとかハグロトンボと言うそうですが、地元の方はなんと呼んでいるのか気になりました。

 

【濁流の銅山川】

5月ころには「笹濁り」と呼ばれる緑白色の銅山川も、このくらいの時期には透明度が高くなっているそうですが、この日は雨の影響でチョコレート色の濁流。水量も多く少し怖かったです。数年前の冬に肘折を訪れた時は、雪景色のなかで流れる漆黒の銅山川を見たことを思い出しました。肘折温泉が発見された時はどんな色をしていたんでしょうか。

 

【石抱温泉】

石抱温泉を訪れるのはじつは今回が初めてでした。この道であっているのかと不安になりつつ車を走らせ、途中で先に石抱温泉に入ってきたという大久保さんと合流し、道を教えてもらい程なく到着。少し開けた山裾に石造りの浴槽(とプラスチック製の桶)だけがぽつんとあり、なぜかちょっと笑えてきました。お湯に手を入れるとぬるくて柔らかい泉質で、浴槽は苔(?)でぬるぬるしていて、よくわからない物体がたくさん浮遊していました。虫がいるのは当然なのですが、浴槽のすぐそばではカエルがゲコゲゴ鳴き、よく見ると浴槽の底でカニが白くなってました。多分目に見えないいろんなものがこの湯の中で共生しているんだろうなと思うと、石抱温泉が生命のスープのように思えてきました。私は入浴する勇気がなかったのですが、大久保さんはこの日だけで石抱温泉に2回入浴していました。ちなみに温泉街の中心周辺も、発見された当時はぼうぼうと雑草が生い茂る河原であったそうです(参:肘折読本)。「上の湯」も発見された当時は、この石抱温泉のように人だけではなくいろんなモノが一緒に入浴していたんだろうなと想像しました。

 

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烏川渡船場跡

 

渡船場跡に係留されていた船。

 

周辺に大きなクルミの木がいくつか生えていました。いつからここに立っているのだろう。

 

渡船場から阿吽院へ向かうゆるやかな坂道。仙台からはるばるやってきた道者たちは、最上川を渡ってこの地に到着した時に、どのような気持ちでこの坂道を阿吽院へ登ったのだろうか。

 

阿吽院跡。鳥居に「烏川地蔵尊」と書かれている。

 

 

銅山川のダムはまるでチョコレート・ファウンテンのよう。濁流と対峙する大久保さん。

 

石抱温泉

 

浴槽の底で小さいカニが白くなっていた。これは死んでるっぽい?温泉に入ってしばらくは生きていたのか気になるところ…。

 

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2回目の取材では木村屋旅館さんに泊まらせて頂きました。前回6月の時よりも、少し温泉街の人通りが多かったような印象があったのですが、実際のところはどうなのでしょう。引き続き、コロナ対応で営業を行なっている肘折温泉ですが、マスクやビニールシートで少し壁があっても、それによって距離を感じるどころか、肘折の人々の温かみは十分伝わって来るなと安心しました。今回の取材でもみなさま大変お世話になりました。

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