ひじおりの灯取材ノート③ | Nozomi TANAKA ひじおりの灯取材ノート③ – Nozomi TANAKA

 

     
ひじおりの灯取材ノート③

※本投稿は、Facebookページ「ひじおりの灯【灯籠絵制作ノート】」(https://www.facebook.com/hijiorinohiNote/posts/152627299805781)で書いた記事の転載になります。「ひじおりの灯2020」に参加する作家が、取材や制作過程を投稿していきます。ぜひページをフォローしてご覧ください。
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{取材記録(7月27日-28日)|田中望}
灯籠制作者の田中望です。7月27日-28日に実施した3回目の取材記録になります。
  
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【受け継がれて行く灯籠】
今回の取材では、肘折温泉から月山へ至る登拝道「肘折口」を少し散策してみるつもりだったのですが、ちょうど27-28日は山形県の全域が大雨にあたってしまいました。そのため予定を変更し、同じ日程で入っていた運営スタッフの鈴木淑子さんが今回展示する灯籠の確認作業をするということなので、その作業に加わることにしました。
ひじおりの灯では、前年度までに制作されている「旧作灯籠」と、今回新たに制作される「新作灯籠」を、会期を分けてそれぞれ展示します。灯籠絵を貼る木枠は、ひじおりの灯のためにデザインされた特注品で、毎年新しい作品の為に張り替えながら使っています。今回は新作の絵が13作品あるので、旧作灯籠の中から13基分の絵を剥がすことになります。
27日、ひじおりの灯実行委員の早坂隆一さんと打ち合わせを行い、28日に3人で灯籠の確認作業を行いました。灯籠は防災センター(旧肘折小中学校)に保管されています。全部で44基の旧作灯籠。長年使ってきたものは劣化が進んでいたりするので、今後の管理のために整理番号をつけ、写真で記録するという作業を行いました。一つ一つの灯籠の記録作業をしていると、話題は自然と制作された作家さんのことや当時のひじおりの灯のことに…。14年目のひじおりの灯は、これまでとは違う進み方をしていますが、それでも灯を絶やさずに続けてこれたことや、いまこの場所で灯をともすことの意味を考えさせられました。
2時間半ほどかけて作業を終え、昼食のために壽屋さんへ行くと、元気なご高齢の団体の方々がいて賑やかでした。淑子さんと、「自分たちもあのくらいの年代になってもひじおりの灯が続いているのだろうか」「おばあちゃんになっても灯籠絵を作ってたらすごいね」と、数十年先の未来に思いを馳せました。
 
 

【肘折温泉の「混浴」】
雄一さん(つたや肘折ホテル)のお話でとても印象深かったのが、肘折温泉の「混浴」についてです。これは「湯治場」である肘折ならではのあり方なのかもしれません。病気を患った人、身体が不自由な人、助けが必要な人、介護のために親子で入浴する人、そういった人々のために、現在でもほとんどの旅館で混浴のための浴室を設けています。肘折での混浴というのは、男女という性別だけのことではなくて、もっといろいろな他者とともに浴すること。このことは以前にも教えてもらった話なのに今回改めて印象に残ったのは、現在のこのような状況だからだと思います。私の実感として、肘折の人々は、こういう混浴的な人となりをしているように感じます。そして肘折温泉というのが、こういう混浴的な、懐の深い空間なのではないかと感じます。
 
 

【命の危険を感じるほどの豪雨】
季節ごとに様々な顔を見せる銅山川ですが、これほど荒ぶった姿を見るのは初めてでした。太い木の枝や岩を飲み込んで生きよいよく流れ下っていく様子を見て、小松渕の大蛇伝説を思い出していました。また、いまの肘折の中心部(上の湯のあたり)は、温泉が発見された当時(807年説)には草茫々の河原で今とは地形も違かったそうなので〔参考:『肘折読本』p16〕、昔から豪雨があれば川も氾濫して、そのたびに少しずつ土地の形も作り替えられてきていたのだろうかとも想像しました。ちょっとうまく言葉にできないのですが、河原という場所があの世とこの世の境界だと言われる所以に、こうした氾濫という出来事があり、形がつねに作り変えられる混沌とした空間であるということと、肘折の聖地性について、身をもって考えさせられる体験でもありました。
 
 

27日の打ち合わせ。


 

とても美味しい夕食@つたや。座席の配置にご注目。


 

防災センターの入り口にも注意書きが


 

44基の灯籠が並ぶ様子は壮観です。出し入れで何往復もして疲れましたが。


 

灯籠の木枠1つ1つに管理用の番号シールを貼ってます


 

灯籠番号の写真記録を撮る隆一さん


 

   


 

銅山川。28日12時頃の様子。すでに怖いくらいの勢いです。


 
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今回はつたや肘折ホテルさんにお世話になり、7月27日-28日にかけて肘折に滞在しました。入館の際には検温を行い、他の旅館さんと同様にみなさんマスク着用、各所にアルコール消毒液を置くなど、感染症対策をされています。
取材2日目(28日)は、前日(その前から山の方では雨が降っていたとも聞きますが)からの大雨の影響もあって、大蔵村でも川が氾濫する被害が出てしまいました。肘折温泉では、温泉街の冠水は免れましたが、下流の旅館さんや住宅、いでゆ館で浸水の被害が出てしまったと伺っています。肘折地区では消防団のみなさんが作業にあたり、被害のあった建物の泥出し・清掃・消毒などを行い、現在は復旧しているそうです。現在の詳しい情報は「大蔵村災害ボランティアセンター」のfacebookページや、大蔵村の公式ウェブサイトでご確認ください。また、ふるさと納税の「ふるさとチョイス災害支援」からは、豪雨被害の復旧のための寄付ができるようです([参考]https://www.furusato-tax.jp/saigai/detail/980)。

 
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Date: 08/11/2020 | Category: ひじおりの灯|フィールドノート|地域 | Name: Nozomi TANAKA